選手評

【RIZIN】川尻達也が日本格闘ファンから好かれる理由

RIZIN、いよいよ後が無い川尻

先日開催された2018年大晦日興行「平成最後のやれんのか」。

メイウェザーVS那須川天心というド級のカードが並ぶRIZIN14のスピンオフイベントとして「やれんのか」の冠をもつイベントが成り立ってしまいました。

メインを飾るのは北岡悟VS川尻達也。この二人のカードじゃなければ「やれんのか」という名前がつくこともなかったでしょう。

結果は北岡の判定勝ち。試合前のインタビューでも北岡は「自分はまだこれからがあるので」と息巻く一方、川尻はどこか悲壮感を漂わせていました。まるで自分の死に場所を探してるがごとく、です。

そうした試合に向けての姿勢が影響したのかどうかは分かりませんが、川尻は試合中も動きに精彩を欠いていたような気がします。

北岡は試合前の煽り映像で「死にはしないけど、相手の存在を否定してしまうのが格闘技」と語っていました。そう、この試合はただの試合ではなくお互いのこれまでの10年とこれからの査定試合だったとも言えます。そしてその査定試合に、川尻は敗れたということになります。

いよいよ川尻は後がありません。日本格闘技を盛り上げるため!と言ってUFCとの契約を切り上げてきた割にその後の活躍はなく、堀口恭司や那須川天心といったニュースターにファンは完全に移行しています。正直、川尻達也のポジションはもうRIZINには残されていないと思います。

しかしそれでも、古くからの格闘ファンからすると川尻達也は見捨てられない存在。ということで今回は川尻達也について語っていきます。

川尻達也は何故格闘技ファンから好かれるのか

ところで、川尻選手は修斗以来何かのタイトルをとったわけではありません。矢地祐介選手や那須川天心選手、もしくはクロングレイシー選手などの現在進行形の選手じゃない。かといって桜庭選手のようにグレイシー狩りのような大きな功績を残したかというとそうでもない。

それでも未だに会場からは絶大な人気を誇ります。それが一体何故なのか、ということですよ。

僕が思うに、川尻達也ほど格闘ファン目線で物事を考えている選手はいないと思うのです。思い返せば、彼は節目節目で格闘ファンの声を代弁するようなチョイスをしてきています。

見果てぬ格闘ファンの夢、DREAMと川尻達也の戦い

PRIDE消滅後、ファンの声、期待を背負って旧PRIDEとHEROES(K-1)が合流する形で立ち上がったDREAM。しかし旧PRIDEファンからすると、谷川貞治率いるHEROESは邪道でした。で、川尻はDREAM旗揚げのライト級トーナメント初戦でHEROESでカルト的な人気を誇っていたブラックマンバと戦います(正直、凡戦でしたが)。「HEROESを否定してくれ!」というファンの声を背負って戦ったわけです。

その後DREAMの中心人物となった川尻。ただそのDREAM自体がどうにもうまくいかない。そんな中、MMAというジャンルを背負い、K-1ルールに挑みます。これは川尻個人の挑戦ではなく、世間的知名度の高いK-1にMMAファイターが挑みDREAMの強さを世間にPRする、という狙いがあったわけです。そしてなんと、圧倒的不利と思われていたK-1ルールデビュー戦で武田幸三という名物キックボクサーに勝ってしまう。しかもKOで。これはもう、MMAファンは溜飲を下げまくったわけです。僕もあれ、会場で見てましたが、会場の爆発っぷりが半端なかったのを覚えています。

常にK-1の影に隠れ煮え湯を飲まされ続けていたMMAファンにとって「俺たちの川尻」になった瞬間だったと思います。

そして次が魔裟斗との戦い。K-1のイベントに殴り込み、メインイベントで魔裟斗と戦いました。結果はKO負けでしたが、果敢に打ち合い、殴られ続けても最後まで立ち続けようとした姿勢に、俺たちMMAファンは誇りを感じたわけです。そういえばこの試合、リングサイドでDREAMファイターが見守っていたのが印象的でした。まさにDREAMを背負ってK-1という巨大ジャンルに挑んだわけです。

次が青木真也との戦い。青木真也もまた奇妙なキャリアを歩んできた選手であり、彼も日本のMMAの為に戦っていたわけですが(この頃までは)、何故か日本のファンに嫌われ、いつのまにかヒール役になっていました。でも、強い。彼は当時DREAMライト級チャンピオンだったわけです。

強いけど愛せない青木真也が破れるところを見たいー。そんなファンの思いを背負って川尻は青木の持つタイトルに挑戦します。僕この試合の日、自分がリーダーを務めるプロジェクトの大事な仕事があったのですがそれをすっぽかして試合を見にいったのを覚えています。5年間続いたDREAMの最大のクライマックスが、この青木真也VS川尻達也だったと思います。

ただ、そんなファンの思いも虚しく、現実はどこまでも過酷でした。僕たちに夢を見させる事を否定した青木が、川尻を秒殺で下しています。事前の盛り上がりから比べるとあまりにもあっけなく、拍子抜けする試合でした。

そして川尻やそのほかのファイターの奮闘も虚しく、DREAMは消滅。まさに夢で終わってしまったのです。

UFCへの挑戦。そしてRIZINへ。

DREAMが僕たちに見せてきたのは夢ではなく現実でした。それはつまり、もう日本では世界最強を目指す戦いは見れないのだ、ということです。

かつて日本は、PRIDEというリングに世界中のツワモノが集まり、世界一強い男が決まる場所でした。僕らはその戦いに酔いしれていたわけですがPRIDE消滅後、世界最強はアメリカに渡りました。どんどん勢力を伸ばしていくUFCに再び日本から狼煙を上げたのがDREAMだったわけですが、どう考えても世界最先端はもはやUFC。強い選手はみんなアメリカに行ってしまう。DREAMのトーナメントを見ても、DREAMチャンピオンでも、世界最強は名乗れない。「強さ」を追い求める格闘技というジャンルにおいてそれは致命的でした。DREAMとはつまり、過去の栄光(PRIDE)とのジレンマ、矛盾に苦しみ続ける時間でした。そして遂にその矛盾を解決できぬまま、夢は夢のままで終わってしまったわけです。

だからこそ、川尻はUFCに渡りました。日本の格闘技が、DREAMが世界で戦えることを証明する為に。川尻より全然強かった青木がUFCへの挑戦を拒んだのと比較すると川尻の挑戦は僕たち日本の格闘技ファンが心か叫びたかった想いを代弁してくれたわけです。

UFCでの川尻の結果が素晴らしかったとはいえません。まるで通用しなかったわけでもありませんが、やはり厳しい戦いが続きました。

そしてその頃、日本ではRIZINが立ち上がりました。PRIDEの中心人物である榊原代表と髙田延彦のタッグが、僕たち日本格闘技ファンを再び呼び戻してくれました。いまだにUFCの圧倒的存在感は大きく、DREAMとは明らかに異なるもののRIZINも「最強と名乗れないけどどうやって世間に訴えていくか」を悪戦苦闘しながら模索しています。

だからこそ、川尻は帰ってきました。しかもUFCとの契約を自ら解除して。完全実力主義のUFCでは負けがこむとリリースされてしまいます。実際、岡見勇信や水垣偉弥といった選手はUFCで挑戦を目指しながらも結果が出ずにリリースされてしまいました。「やっぱUFCはすげえ」と、僕たち日本格闘技ファンにトラウマのようにブランディングしてきたわけです。

でも川尻は違った。そのすごいUFCを自ら蹴って日本に帰ってきたわけです。まあ正直、UFCでの限界を感じていた部分もあったとは思いますが、自らUFCとの契約を解除して日本に帰ってきた、というドラマで僕たち日本格闘技ファンはご飯を何杯でも食べられてしまう

僕たちファンが日本のMMAの中心地であるRIZINにどんな想いを抱いているか?期待はしてるし応援もしてるけど、どうにもじれったい想いをしているわけです。僕たちが見たいのは勝負論。昨日今日デビューしたようなタレント格闘家が見たいわけじゃない。芸能人の娘が視聴率が取れるのはわかる。世間に受けるコンテンツと格闘ファンが見たいものは必ずしも一致しない。でもDREAMの例があるから、世間で受けるコンテンツを否定するわけにはいかない。でも俺たちが見たいのはー。。。

そんな時にやってきたのが堀口恭司。本物のUFCファイター。名実ともに世界トップクラスの実力を持ち、圧倒的強さを日本のファンに見せている選手です。僕たちの関心は、堀口の強さ。でも堀口帰国後の2戦は、堀口が強すぎて逆に堀口の勝負が見れていない。そう、堀口が勝負できるような相手がいないのです。

だからこそ、同じくUFCの契約を解除してきた川尻なわけです。「UFC組」というわかりやすいブランドを持つ選手はそうそういません。UFCでの実績は堀口の方がはるかに上とはいえ、階級が上だった川尻ならなんとかなるかもしれない。そんな幻想を抱かせてしまうわけです。

賛否両論あった川尻のバンタム級挑戦ですが、「日本格闘技ファンと共に」という彼の一環したキャリアで見てみると納得感のある挑戦といえます。

ただ結局彼は、ライト級に戻します。多分理由は、五味隆典。軸が定まらず、ブレブレな気も正直します。でも、そんなことは承知の上でそれでもしがみつきたいのが川尻達也だともいえるでしょう。

いかがでしたでしょうか。僕ももちろん、川尻選手は大好きです。重要な試合で必ずと行っていいほど負けてしまうところも人間臭い。まさに等身大のファイターなのが川尻達也という男なのだと思います。

北岡に敗れ、その後が描きづらくなった川尻ですが、その最後の時まで見守りたいと思います!

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